年明け早々にある会社の破産の申立てをしました。
企業の破産申立ては,いつも,気が重い仕事です。
債権者は怒鳴り込んでくることもありますし,今回は,あまりに急な話でしたので,その間,ほとんど他の仕事をすることができませんでした。
何よりも,従業員を雇用していた場合,従業員がかわいそうです。
未払給与などはその8割が労働者健康福祉機構で立て替えられますので,実質的な損失は,結果的には多額にはならないことも多いのですが,それが支払われるまでには,多くの場合2ヶ月程度を要しますので,ギリギリの生活をしている方々には大変です。
かといって,こうした現実に目を背けて,「逃げてしまう」という選択肢を取られる方がおられます。いわゆる「夜逃げ」です。
しかし,「夜逃げ」こそ,多くの方に更に迷惑をかけてしまいます。
破産申立てをすれば,うまくいけば,管財人によって,債権者に配当することもできますし,従業員への立替払いもスムーズに進みます(労働者健康福祉機構に未払給与等の証明書を提出する必要があるのですが,破産管財人がこれをしてくれます。)。
経営者は,裁判所で債権者集会(財産状況報告集会)が開かれますので,その際,いろいろな説明を求められますし,場合によっては,債権者から糾弾されることもあるでしょう。
しかし,経営がうまくいかなくなった場合には,それが最低限の責任だと思います。
その意味では,今回,ご依頼のあった経営者は,その覚悟を持って来られたので,最後に責任を果たそうとされたのでしょう。
ただ,本当は,もう少し早くご相談に来て頂ければ,民事再生による再建も困難ながら考えられましたし,負債を余り残さずに通常清算をすることができれば,破産のような迷惑をかけることもありませんでした。
経営者は,稼がないといけないわけです。
私も,中小企業の経営に携わる人間ですので,改めて,自覚しました。
ちなみに,破産の申立てをしても,現実には,債権者集会などで糾弾されることはそれほどありません。
それまでに,申立て代理人や破産管財人である弁護士がそれなりの説明をしている場合もありますし,債権者の皆様方も,破産法に従ってしか配当を受けられない以上,本来の仕事に邁進するしかないと考えられているのでしょう。
弁護士もたまに,破産申立て等によって,弁護士費用を「踏み倒される」こともありますが,その場合は,諦めて,ほかの業務に専念するしかないので,そのようにしております。悔しい気持ちは他の債権者の方々と同じです。
特に,橋本市,伊都地方周辺の方々(もちろん,全国の方々も同様ですが。),是非,稼いで下さい。それも,経営者の責任です。